第9のサヨナラ
ガラスの靴じ
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にいけない
その2
転機は
突然訪れた
会社がつぶれる
出張から戻
てきた夫がある日
突然言
たのだ
夫は当時
誰もが名前を知
ている
大手の航空会社で働いていた
国際線のパイロ
トだ
聞けば
会社は上層部の放漫経営のために
ずいぶん前から
財政
難に陥
ていたらしい
それが
最近の不景気の影響を受け
いよ
いよまずいところまで来たという
国からの融資や
買収先を募
ているところだが
いずれにし
ても
大幅なコストカ
つまり
リストラは避けられない
夫は言
私には
その時
事の重大さがよく分か
ていなか
大きい会社なのだ
パイロ
トなのだ
大変ねえ
そんな気の抜けた返事をしたような気がする
他人事じ
ないんだぞ
夫は
責めるように言
思えば
私の人生は
その時すでに
大きな渦のような運命に
るぐるぐるぐるぐる
翻弄され始めていたのかもしれない
熱帯魚
好きなんですか
後ろに並んでいた男性が
ふと言
私に向か
て話しかけてい
ると気づくまで
少し時間がかか
はい
私は
浮かせていたヒ
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ルの踵を履きなおすと
当たり障りのない
答えを返した
カメラを首から下げている
カメラマンか何かなのだろうか
まだ
20代前半ぐらい
若い
何で
こんなに行列してるんですかね
先着順で
安く手に入るんです
私は
手にしていたチラシを見せた
はあ
男性は納得のいかない様子で
行列を眺め回すと
なんか
異様
ですよね
と低く笑
男性は
自分はこの界隈に住んでいるのだが
毎朝
ここに行列が
できるのを不思議に思
ていた
今日
偶然余裕があ
たので
の理由を知りたくて列に並んでみたと言
結構
熱帯魚好きな人
多いんですねえ
いえ
多分
業者の方が多いだけだと思います
と私
業者
ここは
一般向けというよりは
どちらかといえば
業者向けの
お店ですから
へえ
ここで仕入れて
ほかで売る
みたいな
はい
多分ですけど
詳しいんですね
いえ
別に
結婚する以前
わずかな間だけだが
熱帯魚を飼
ていたことがあ
親元を離れて
一人暮らしをはじめた頃のことだ
当時
私は旅行代理店に勤めていた
毎日
終電続きで
家と会社を往復するばかり
とても忙しい毎日
を送
ていた
買い物に出かける暇もなければ
そもそも
おし
れをする機会もなか
せめて
長らく時間をすごす
部屋だけでも着飾ろうとして
イン
テリアに力を入れた
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テンレ
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ルをフ
ク型のものに入れ替えたり
ベランダにレン
ガを敷いてみたり
北欧製の家具を買
てみたり
けれど
熱帯魚を買うことを思いついた時は
さすがに躊躇した
の小さなアパ
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トだ
階下に住む人の足音が
電気から吊り下が
た紐の震えとな
て伝
てくるようなアパ
|
トだ
そんな部屋に
熱帯魚だなんて
身の程知らずだ
てことは
自分でもよく分か
ていた
でも
私は
昔から
そういうミ
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なところがあ
なら諸星君
ならキムタク
みんながいいという
疑いのないものが好きだ
だから
東京で働いて一人暮らしをすると決めた時も
場所と
取りにこだわ
下北沢が近くて
ロフトがあ
近くにおし
れな喫茶店がある場所
すべて
幼い頃に見た
トレンデ
ドラマの影響だ
東京で働くということは
そういうことなんだと
勝手に思い込ん
でいた
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