第8のサヨナラ
夏の日の花火感傷
その3
と弾けて
ドン
裕子さんは
どう思
どう
だから
きの話を聞いて
きの
大沢マキさん
裕子さんは首をかしげて
少し困
た表情をした
僕は慌てて
別に
やきもちを焼いてほしいとか
そういう意味で
話をしたわけじ
ないよ
と言
わか
てるわよ
裕子さんは微笑むと
チラ
と時計を見る
カラン
グラスの中から氷が落ちる
もう時間
と僕は聞く
まだ大丈夫
裕子さんは首を振る
僕は裕子さんのグラスを覗き込んだ
そこには
半分を少し過ぎた
くらいのアイステ
|
が残
ていた
裕子さんは
いつもゆ
くりと飲み
くりと食べる
僕みたい
に分量を間違えるようなことはしない
溶け出した氷をすするよう
な真似もしない
カレ
|
とご飯じ
ないけど
その割合は絶妙なほどピ
タリだ
でも
それは言い換えれば
裕子さんの飲み物がなくな
た時が
終わりの時間ということでもある
裕子さんは
来週
東京を離れて
どこか遠くに行くことにな
いる
聞かされたのは
つい1週間前のことだ
二人で映画を見終わ
いつものようにご飯を食べている時のことだ
遠くに行くの
裕子さんは突然に言
前後の脈絡とか
一切なか
明日は
雨が降るでし
それは
|
スで見る
天気予
報の降水確率ような軽い調子だ
行きたいから行くのか
行きたくいけど
行かなければならなくな
たのか
よく分からなか
そうなんだ
僕は言
と思う
ひどく動揺していた
いつか
そうなるだろう
そんな気はしていた
でも
それが今
この時に
こんな形で訪れるとは考えていなか
結局
どうして遠くに行かなければならないのか
僕は聞くことが
できなか
出会
てから
1年が経とうとしていた
もう1年なのか
それともまだ1年なのか
よく分からないけど
僕らはとにかく
その間
たくさんの映画を観た
何度か家に泊め
てもら
一緒に朝焼けを見た
でも
僕が裕子さんについて知
ているは
そう多くない
年齢が
かなり
離れていること
映画がとても好きなこと
一番
好きなのは
トリコロ
|
一番嫌いなのは
ナチ
ラルボ
|
キラ
|
後は
お肉が余り好きではないこと
雨の匂いが好き
なこと
意外に臆病なこと
足が子供並にすごく小さいこと
本当
に限られたことばかりだ
裕子さんの本当の年齢とか
何の仕事をしているかとか
どんな人
生を送
てきたのかとか
僕のことを本当はどう思
ているのか
僕は知らない
もちろん
知ろうと思えば
知ることができたのかもしれない
僕は聞くことができなか
二人の間にある
大きな隔たりを
目に見える形として突きつけら
れるのが怖か
なぜなら
それは
僕にはどうすることもでき
ないものだから
カラン
裕子さんのグラスの中で氷が落ちる
僕は
ただ
と裕子さんの手元を見詰める
と見つめることで
氷が溶ければいい
そう思う
好きだから
相手を困らせていいというわけではないのだ
この1
週間
僕は自分に
そう言い聞かせ続けている
と弾けて
ドン
何考えてるの
裕子さんが言う
何も
僕は答える
分からないことが多すぎる
そんなこと言
ても
どうしようもないことだ
ン君てさ
裕子さんは頬杖をついて
僕の顔を覗き込んだ
甘いフロ
|
ラルな香りが
鼻先をかすめる
何考えてるか分からない
て言われない
よく言われる
僕は答えた
大沢マキにも言われた
以前に付き合
ていた彼女にも言われた
女の子だけじ
ない
みんなそう言う
友達も
先生も
母も
れた父も
新しい父も
沈黙が訪れると
それをまるで僕のせいで
あるかのように
何考えてるの
よくないよ
そういうの
でも
何も考えてないんだから
うがないよ
裕子さんは
ふう
とため息をついた
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