第8のサヨナラ
夏の日の花火感傷
その1
遠くの夜空に上る
一筋の光の軌跡が
と弾けて
火花を咲かせた
たまや~
近くの席にいた集団が大声で叫ぶ
ドン
遅れて聞こえてきた衝撃波に
と裕子さんが体を飛び上がらせる
くりしすぎだから
と僕
裕子さんは舌をペロ
と出すと
ごめんなさいね
年が年なもので
と答えた
また
そういうこと言
裕子さんは
上目遣いで僕の顔をじ
と覗き込む
ウソ
ごめんね
と笑
その日
僕は裕子さんと二人
花火を見に来ていた
本当は土手で見るつもりだ
たのだけど
大変な人だかりで
途中
で挫折してしま
僕らは結局
|
プンテラスのあるカフ
お茶をしながら
彼方に微かに見える花火を見ることにしたのだ
学校はどう
裕子さんが言う
僕は肩をすくめると
まあまあ
かな
と答えた
カフ
のオ
|
プンテラスを吹き抜けていく風が心地よい
勉強は
ぼちぼち
裕子さんは
ふふ
と微笑むと
これじ
お母さんみたいか
と言
その時
僕の耳に誰かが言い争う声が聞こえてきた
裕子さんが周囲をキ
ロキ
ロする
僕は
|
プンテラスの入り口の電柱の影に
座り込んだ一人の女の子の姿を見つけた
その横には
男の子が途方に暮れた様子で立ち尽くしている
年齢は
僕より少し上というところだろうか
何を喋
ているのかは分からない
耳を済ませても
会話の内容までは聞き取れなか
でも
喧嘩しているのに違いはなか
どうして
女の子は
時と場所を選ばないの
裕子さんは
言い争うカ
プルを振り返ると
声を潜めて
どうか
した
と言
中学校の時の友達にね
大沢マキ
て子がいたんだ
大沢
マキ
仮名だよ
裕子さんは驚いた顔をして
それから目を丸くした
何で
仮名なの
何で
その人に悪いから
かな
裕子さんは目を丸くさせる
ン君は
律儀だね
と笑
でも
どうして
マキなの
思いついた名前がそれしかなか
たから
そんなに可笑しいことだろうか
裕子さんは
うつむいたまま
ばらくの間
肩を震わせて笑
しまいにはハンカチを目元にあ
てはじめた
と弾けて
ドン
僕は
その発作のような笑いが治まるのをじ
と待
僕と大沢マキとは
小学校が一緒だ
6年生の時には同じクラスで
林間学校に出かけた
黒こげにな
たご飯に
灰混じりのカレ
|
をかけて
一緒に食べた
こともある
でも
だからとい
格別
仲良しというわけじ
ない
実際
中学校に入
てからというもの
個人的に
親しい口をきいたこと
はなか
中学校三年生の春
ある日の放課後のことだ
僕は
偶然
下駄箱で大沢マキと一緒にな
一緒に帰る
今にして思えば
何でそんなことを言
たのか
よく分からない
社交辞令
て奴だろうか
裕子さん曰く
僕はとても
律儀
な性
格なのだ
大沢マキは
嬉しそうに僕の後をついてきた
僕らの通う中学校は
私立の中学校で
地元から少し離れた場所に
ある
学校から駅まで歩いて
電車に乗
3駅揺られて
駅を
降りて
商店街を抜けて
もうち
としたらバイバイ
とい
うところで大沢マキは突然
立ち止ま
て泣き始めた
うど
電柱の下で女の子がそうしているように
何が起こ
たのか
よく分からなか
何かまずいことを言
たか考えてみたけど
よく分からなか
そもそも僕は
その間
ほとんど口を聞いていなか
たのだ
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