第7のサヨナラ
夜のヴ
ァ
|
ジンロ|
ドその1
ミキが選んだのは
、
真っ
赤なカラ|
ドレスだっ
た。
ピンク色を選んだ人が大半で
、
同席するテ|
ブルの中で当たっ
たのは
、
私一人だけだっ
た。
﹁
当たっ
た人はどうぞ前にいらっ
しゃ
っ
て下さい!
﹂
司会者が言う
。
当選者はミキからプレゼントを受け取ることになっ
ているらしい
。
私は黙
っ
ておこうと、
オレンジ色の札を手元に隠したが、
目ざとく見つけたアイリが
﹁
ナオ当たっ
たっ
て!
﹂
と騒ぎたて、
前へ行かざるを得なくな
っ
てしまっ
た、
﹁
ごめん。
当たっ
ちゃ
っ
た﹂
私がそう言
っ
て、
オレンジ色の札を差し出すと、
ミキは﹁
何で謝るのよ
﹂
と小さく笑っ
て、
ほらとカメラマンを指差して、
私の背中に手を添え
、
大きくにっ
こり微笑んだ。
いつものミキとは全然違
っ
ていた。
可愛いというより
、
キレイで、
たくましささえ感じた。
※
結婚には
、
独特のパワ|
があると思う。
以前
、
務めていた職場に、
寿退社を間近に控えた人がいたが
、
その人が放
っ
ていた﹁
幸せのオ|
ラ﹂
もすごいものがあっ
た。
それまで
、
少しでもミスをすると、
いつまでもネチネチ責め続ける陰険な人だ
っ
たのが、
﹁
大丈夫よ|
﹂
﹁
大したことないっ
て|
﹂
と人が変わ
っ
たように愛想がよくなっ
た。
ありえない話だけど
、
世の中が、
そんな風に結婚を間近に控えた人ばかりだ
っ
たら、
極端な話、
戦争もなくなると思う。
それぐらい
、
結婚は愛に満ちている。
許しに満ちている。
スポ
ッ
トライトの中心にいるミキをぼんやり眺めながら。
いつか結婚する時がきたら
、
自分も彼らのように、
強く、
優しくなることができるのだろうか
。
そんなことを考えた。
少なくとも
、
今の私には、
ミキの姿は眩しすぎて、
直視することはできそうになか
っ
た。
※
﹁
ちょ
っ
と、
ナオ、
飲みすぎじゃ
ない﹂
んどぷ
、
どぷ。
空のグラスにワインが注がれる。
ウエイタ|
が立ち去
っ
たところで、
レイコに注意された。
﹁
どうかしたの?
﹂
﹁
ううん。
別に﹂
私は新しいグラスをあお
っ
て、
笑顔を作っ
た。
その日
、
原宿にある結婚式場で、
私は
、
古い友人の結婚式に参加していた。
新郎も
、
新婦も、
同じ高校時代の同級生だ。
その当時から続く10年に及ぶ
、
長年の恋がようやくゴ|
ルを迎えたというのだから、
喜びも嬉しさも倍
。
本来であれば嬉しくて仕方ないはずの結婚式だっ
たが
、
私は、
1ヶ
月程前に、
付き合っ
ていた彼と別れたばかりで、
ひどく疲れていて
、
それどころではなかっ
た。
﹁
何かあっ
た?
、
カレシ?
﹂
レイコの
﹃
カレシ﹄
という言葉の語尾が、
心なしか上がっ
て聞こえる
。
28歳にもなっ
て、
いつまで高校生みたいな話し方をするのだろう
。
思わず笑っ
てしまっ
た私に﹁
何?
﹂
レイコが怪訝な顔をする。
﹁
ううん﹂
私は首を振る。
﹁
それよりさ、
あれ見てよ﹂
レイコが体を寄せてくる
。
声を潜め﹁
あの子、
格好いいよね﹂
と言う
。
レイコが指差す、
その細く長い指の先には、
先ほど写真を撮っ
てくれた若いカメラマンの姿があ
っ
た。
アシスタントか何かじ
ゃ
ないか、
と思うくらい若い。
ス|
ツ姿がまだあどけなか
っ
た。
きっ
と、
着慣れていないのだろう。
レイコは
、
私の気のない返事にも構う様子はなく、
左手の薬指にはめた
、
16カラッ
トのチョ
コレ|
トのような大きな指輪をつけたり、
外したりしながら
﹁
カメラマンっ
て、
二次会とか行くかなあ﹂
と呟いた
。
※