第6のサヨナラ
もしブル
|
スハ|
プが吹けたら、
いい歌を奏でるだろう
。
その1
高校生の頃
。
﹁
ア|
メン﹂
と言うべきところ、
﹁
ザ|
メン﹂
と大声で祈っ
た友人がいた。
パンクな奴だ
っ
た。
もし生きていたら
っ
て、
別に死んだわけじゃ
なくて、
単に卒業以来
、
一度も連絡をとっ
ていないだけだけど、
どんな30歳にな
っ
たのかなっ
て、
たまに思っ
たりする。
※
ドカン
!
派手な音がして
、
僕は我に返っ
た。
会計を済ませて席に戻ろうとした時だ
っ
た。
見れば
、
磯山さんが障子を蹴破っ
て、
土間にぶっ
倒れている。
何や
っ
てるんですか?
と体を引き起こすと、
磯山さんは
、
ろれつの回らない口調で、
﹁
でんぐり返しをしようとして失敗した﹂
と訳の分からないことを言
っ
た。
駆けつけてきた店員と二人で
、
磯山さんの体を引き上げ
、
障子を立て直す。
﹁
大丈夫だ。
心配ない﹂
磯山さんが何度もそう繰り返す
。
隣席の若い一団の一人が
、
ぶっ
と噴き出し、
﹁
てめえの心配なんかしてねえ
っ
つの﹂
と小さく呟いて、
一団はどっ
と笑っ
たムカ
っ
とするのをぐっ
と堪え、
僕は﹁
ほんとすみませんでした﹂
と自分より一回り若い店員に
、
何度も頭を下げた。
障子は下3枚が破れ
、
骨の部分がポッ
キリ折れていた。
心中穏やかではなか
っ
たが、
コソコソ笑う若い連中が気になっ
て仕方なくて
、
僕は努めて何でもなかっ
た風を装っ
た。
※
﹁
一杯やっ
ていかないか﹂
という誘いにう
っ
かり乗っ
たのが運のつきだっ
た。
普段は低姿勢の磯山さんだが
、
酒癖の悪さは
、
社内でも噂だっ
た。
いつもなら
、
何か理由をつけて断るなり、
たとえ飲みにでかけたとしても
、
頃合を見計らっ
て抜け出すところだが、
今日は東北出張の最中だ
っ
た。
戻る先は
、
同じ駅前のホテルと決まっ
ている。
誘いを断る
、
上手い口実が見当たらなかっ
た。
明日も朝が早い
。
まさか、
飲み潰れるようなこともないだろうと軽く見ていたのがいけなか
っ
た。
磯山さんは
、
浴びるほど酒を飲んだ。
今回の出張の結果が散
々
たるものだっ
たことが、
かえ
っ
て美味い酒の肴になっ
てしまっ
たのかもしれない。
そのうち
、
目が座っ
て、
ろれつが回らなくなっ
て、
後は、
お決まりの絡み酒
。
気づけば
、
0時を回っ
ていた。
※
しばらくしたら店長が出勤してくるので
、
それまで待
っ
ていてほしいということで、
磯山さんと二人
、
元の席で待たせてもらうことになっ
た。
磯山さんは悪びれた様子もなく
、
店員を呼びつけると
、
熱燗を追加注文した。
挙句
、
腹が減っ
たと言い出して、
﹁
マナベ!
お鍋!
﹂
僕の名前を何度も連呼して
、
くだらない親父ギ
ャ
グまで飛ばした。
その都度
、
若い連中が敏感に反応して、
オウム返しに
、
同じものを注文しようとする。
乱れたバ
|
コ|
ド頭に、
餓鬼のように突き出た腹。
磯山さんが醸し出す
、
絶滅寸前のうだつの上がらないサラリ|
マンの調子が物珍しいか
、
さもなければ、
そんな奴にペコペコして酒を注ぐ僕の姿が
、
さぞ物悲しく映っ
たのだろう。
よくよく見れば
、
高校生といっ
ていいほどの幼い連中だっ
た。
高校生がお酒なんか飲んじ
ゃ
ダメだろと思いつつ、
そういえば、
あの当時は
、
自分も飲めない酒を一生懸命飲んでいたことを思い出し、
自分を重ね合わせてふ
っ
と苦笑いをこぼすけれど、
﹁
俺も丸くなっ
たな
﹂
とうそぶく、
あの頃、
大嫌いだっ
たはずの大人になっ
てしまっ
たような気がして、
僕は苦笑いを押し隠すように、
磯山さんの目の前の熱燗をひ
っ
たくっ
て、
ぐいっ
と飲んだ。
※