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第5のサヨナラ
おばあち
ゃ
んが末期がんになりました。
その3
﹁
みゆき|
!
﹂
ママは
、
おばあちゃ
んと二人きりで過ごす時間が気詰まりで、
お見舞いに行く時は
、
必ず、
私を誘っ
た。
もともと
、
折り合いの悪い、
嫁姑だっ
た。
毎年
、
正月になると実家に帰るのが恒例だっ
たけど、
それを除けば
、
どんなに誘われようと、
実家に顔を出すこともなかっ
た。
正月のイベントさえも
、
﹁
部活とかいろいろあっ
て可哀相じゃ
ない﹂
っ
て私をダシにして
、
私が中学校にあがっ
た年に、
とりやめにした。
﹃
何でも子供に頼るなっ
つ|
の﹄
以前であれば
、
瞬時に﹃
そうだそうだ﹄
とか﹃
それが大人なら、
大人になんかなりたくない﹄
っ
てレスがあっ
たけど
、
今はもう
、
何もない。
※
﹁
ねえ、
みゆきっ
たら!
﹂
こ
っ
ちに越してきてから、
一度だけ、
お見舞いに行っ
たことがある。
その時
、
おばあちゃ
んは、
意識が朦朧としていて、
私のことが誰なのかもよく分からなくな
っ
ていて﹁
はるみ、
はるみ﹂
と私のことをママの名前で呼んだりした。
でも
、
完全にボケてしまっ
たかというと、
そういうこともなくて、
パパとママが席を空けている間
、
窓の外を見ながら突然、
﹁
東京の空とは、
比べもんにならんくらいキレイやろ﹂
と呟いたりして
、
その横顔には
、
何もかも分かっ
たような、
そんな落ち着きがあっ
て、
私は怖くな
っ
た。
あれから一度も病院に行
っ
ていない。
※
﹃
おばあちゃ
んが末期がんになりました。
﹄
それは
、
まっ
たくのデタラメだっ
た。
でも
、
そうすれば、
誰かが構っ
てくれるような気がした。
確かに
、
半端じゃ
ないくらいレスはあっ
たけど、
次から次へと飛び込んでくるのは
、
見知らぬ人のつぶやきばかりで、
良心がとがめる
っ
ていうか、
むしろ、
そうしなければ、
誰も構
っ
てくれないのかっ
て思っ
て、
悲しくなっ
た。
明美やリカが
、
自分に関係のない言葉でつぶやくのが嫌で、
それを見たくない一心で
、
一時期、
フォ
ロ|
しまくっ
た。
誰でもいいから
、
何でもいいから、
あいつらの言葉を
、
埋め尽くしてしまいたかっ
たけど、
今は
、
そのボリュ
|
ムが逆に、
私を苦しめている。
※
立ち上が
っ
て、
窓の外を見る。
嫌になるくらい
、
空だけが、
本当にキレイだっ
た。
﹁
悲しくなっ
たら、
空を見よう﹂
そう教えてくれたのは
、
小学校の時の担任の先生だ。
クラスメイトの一人が
、
親の都合で転校しなければならなくなっ
た時
、
送別会の席上で言
っ
たのだ。
﹁
君たちはこの空を通して、
ずっ
と、
ずっ
とつながっ
ている﹂
みんなの興味を引きたいばかりに
、
﹁
U
F
O
を見た﹂
とウソばっ
かり言っ
ている、
どうしようもないクラスメイトだ
っ
た。
でも
、
先生の言葉に、
親しくも何ともなかっ
たくせに、
私を含め
、
みんながその別れを惜しんだ。
大縄跳びの時に
、
失敗すると、
鬼みたいな赤い顔になっ
て怒る、
とても厳しい先生だ
っ
た。
あんまり好きじゃ
なかっ
たけど、
その言葉だけは
、
不思議と心の中に染みた。
※