第4のサヨナラ
君の成長が
嬉しくもあり
寂しくもあ
その1
突然
動きを停めた電車の中
君は文句ひとつ言わずに立
ていた
苛立ちが充満した車内では
君よりはるかに年上の子供が
疲れただの
おんぶしてだの
こしてだの
せがんでいた
なのに君は
壁に手を添えて
ただじ
と黙
て立
ていた
それだけでも立派なものだ
と私は思う
ただ
甘えることをしないその姿は
私の目に
しくも映
大丈夫か
私は尋ねる
君は頷き
そして壁にもたれかか
事故
て何なのかな
君は言う
私は少し考えてから
突発的なトラブル
と答えた
でも
君は
人身事故じ
ない
 
塾に行くとき
よく起こるもん
何でもなか
たことのように言う
そうだな
しばらくは動かないかもしれないな
姿は見えないが
相変わらず
疲れただの
おんぶしろだの騒ぎ立
てる子供の声が聞こえてくる
君はチラ
と目を向けると
そんなんで怒
たりしち
いけないんだ
お母さんも言
そう言
もたれかか
た姿勢を少し正すと
早くしろとか言
駄目だ
と続けた
身につまされるような思いをしているのは
と私だけではない
だろう
足を組んでいた青年は
足をほどいて
座席に深く座り直した
大音量で音楽を聴いていた若者も
心なしかボリ
|
ムを下げたよ
うな気がする
目の前の席に座
ていた
くりセ
|
|
を着たおばさんが
いお子さんねえ
という顔でに
こり微笑んで
私は思わず目をそ
らした
お母さんにメ
|
ルしておくね
君はそうい
携帯をいじりはじめる
君は最近
人前で
パパとかママとか言うのをやめた
そういえば
以前までは自分のことを
ン君
と呼んでいたが
いつの間にか
それもやめてしま
1時間ぐらい遅れる
て言
ておけばいいかな
私には
正直
君のデキの良さが
誇らしくもあり
同時に
後ろ
めたくもあ
君と離れて暮らすようにな
もう3年が経とうとしている
そういえば
君は
あの当時から
とても物分かりのいい子供だ
全く言葉を理解しない
怪獣でしかなか
た時代を除けば
一緒に暮らした6年間
私は君にワガママらしいワガママを言われ
た記憶がない
もちろん
それは則子がいつも言
ていたように
私が仕事に明け暮れ
ほとんど家に寄り付かず
わがままを言いたくても
言えない環境だ
たせいもあるかもしれ
ない
君は
私のたまの休みの日にも
遊びに行こうとか言うこともなく
パジ
マ姿で寝転がる私のそばに座
本を読んだり
|
ムを
したり
大人しく過ごしていた
私と則子が別れることを告げた時でさえ
君はただ
言葉なく
いただけだ
泣くことも
叫ぶことも
抗うこともしなか
私は
君のその物分かりのよさが不満であり
不憫だ
だから
別れた後
則子にお願いして
月に一度
こうや
て会う場を設けてもらうと
それまでの罪滅ぼしの意味もこめて
目一杯
君のワガママを聞いてあげよう
そう思
君は当初こそ
どこへ行きたい
と尋ねても
どこでもいい
と遠慮がちに応えていたが
に行きたい
とハ
キリ
自分の希望を口にするようになり
何か欲しいものがあるか
そう尋ねると
指折
欲しいものリストを並べ立てるようにな
一緒にいる時よりも
パパと過ごす時間が増えた
そんなことを言
はし
ぎたてる無邪気な様が
私には
嬉しくて仕方なか
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