第3のサヨナラ
振り返るには早すぎる
やり直すには遅すぎる
その2
俺たち
なんでダメにな
たんだろう
ふと
ウジ君が言
それまでの陽気なのとは打
て変わり
別人のように静かな口調だ
何故かは分からないけど
私はその横顔に小学校の頃
猫を飼
いたことを重ね合わせた
ベガという名前の捨て猫だ
トラ猫だ
たが
額の部分だけ
白い毛が生えており
その形が
見ようによ
ては☆に見えたことから
兄が名づけた
生まれてすぐに捨てられて
食べるものも食べられず
餓死寸前の
環境がそうさせたのか
食べることに関しては
とにかく意地汚い
猫だ
始終
餌をねだ
たし
餌を食べている時に近づくと
毛を逆立た
せて怒り狂
てきた当初は
骨と皮ばかりのやせ細
た体は
一年もすると丸
狸のような立派な体躯に成長した
動作はのろく
反応も鈍く
一日のうち
食べているか
寝ている
そのどちらかしかなか
そのうち
寝ながら食べ始めるだろうと
兄はからか
デブで
ドジで
およそどうしようもない猫だ
たが
私は兄があきれるく
らいに可愛が
一緒にお風呂に入り
一緒に寝床に入
好きだ
 
ベガが
尿路結石という病気にかか
て亡くな
たのは
中学校3
年生の時だ
尿路結石というのは
おし
こが固形化して
尿道につまるように
なる病気だ
トイレの回りを所在なくうろうろするようになり
ご飯もあまり食
べなくな
たベガを病院へ連れて行くと
このままでは膀胱に詰ま
た尿が
体中へ漏れ出し
死ぬだろうと言われた
おし
こを溶かす薬を入れるために
尿道からカテ
|
テルを注入し
ようとすると
ベガはあらん限りの力を振り絞
抵抗した
一命はとりとめたものの
完治までは望めなか
マグネシウムの少ない
味気のない餌に切り替えられたベガは
モノを食べなくなり
ほとんどを寝てすごすようにな
私と母は
そんなベガが立ち上がると後を追いかけて
おし
こをしたかどうかを確認し
していなければ
またクリニ
クへ連れて行
てカテ
|
テルを刺す
というのを繰り
返すようにな
私がベガの話をしている間
ウジ君は終始
たままだ
タバコを何本も吸
車内は煙で充満した
何でそんな話をするんだ
そう言いたか
たんだと思う
私にもよく分からない
ベガのことなんて
今の今まです
かり忘
れていた
ある日
学校から帰ると
家の中からベガの姿がなくな
ていた
私がいない間に
母がクリニ
クにベガを連れて行
安楽死さ
せたのだ
私は
母を責めた
お母さんが殺したのだと責めた
母は何も言わ
なか
今思えば
それは辛くて
とても苦しい判断だ
たと思う
私は中学校3年で
勉強や部活に忙しく
実際に
ベガの面倒を見
ていたのは母だ
遺体は引き取らなか
私と母は
近くの土手に行
遺体の
ない墓を作
手を合わせた
そして
私はベガという猫がいた
ことを
忘れてしま
ゴメンね
と私は言
何が
ウジ君は声もなく笑うと
簡単に謝るなよ
と言
半年前
ウジ君との連絡を絶
たのは私の方だ
夏を過ぎ
秋を迎えると
残された大学の単位取得と
来るべき就
職活動に備えて
を訪問したり
就職セミナ
|
を受講したり
免許を取りに行
たりで忙しくな
それまでのように
ウジ君と気ままに遊び回
てもいられなく
ゴメン忙しいから
とシ
ウジ君からの誘いを断
たのには
当に
他意はない
ただ
そうするには時期が悪か
当時
ウジ君は
大学を辞めて間もなか
信州にある実家の旅館が上手くい
ていないとかで
親の仕送りが
途絶え
自分で稼がなければならなくな
たらしい
詳しいいことは分から
ない
もともと多くの過去を語る人ではなか
大学を辞めたシ
ウジ君は
先輩のツテでどこかの事務所にもぐり
こんだ
でも
端扱いのアシスタントに我慢ならずに
すぐに辞めてし
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