第2のサヨナラ
独身最後
結婚前夜
その2
マキという女にも
胸がほとんどなか
もう
男は
女の胸ば
かり
ボンレスハムのような二の腕をした女が言
うがないだろ
本能なんだ
村田がそう言
ふくよかな
というか尻のように肥えた女の胸
を凝視する
いやだあ
女はボンレスハムのような二の腕で
胸の谷間を隠す
今でも
その子のことが忘れられない
マキという女が言う
まだ好きなの
好きとか
嫌いとか
忘れるとか
忘れられないとか
そういうこ
とではない
どういうことなの
マキという女は言う
どういうことなのだろう
俺にもよく分からない
男は
いつまでも
心は少年だ
てことだよ
なあ
答えが不明確な押し問答がはじまりそうになると
村田はいつも
歯の浮くようなことを言
女をはぐらかす
俺は
そんな村田に尊敬の念さえ抱く
村田は
俺と違
女たちを丁重に扱う
もちろん
昔からそうだ
たわけではない
こいつも
かつては踊り場の住人だ
男の誰もがそうであるよ
うに
人はそれを
時に成長とも呼ぶし
時にあきらめとも言う
俺の知り合いの中に
現職の国会議員の知り合いがいた
結婚式で
誰に乾杯の挨拶をしてもらうかということにな
た時
ミキはその男に乾杯の音頭をと
てもらいたいと言
俺は反対した
その男は友人の友人に過ぎず
直接的な関係ではな
そもそも
結婚式に呼ぶか呼ばないかのレベルであ
乾杯の音
頭を任せる任せないのレベルではなか
はずだ
しかし
ミキはこだわ
これから先
いい関係を築くチ
ンスだと言
父も母も喜ぶ
親孝行の一貫だと思えばいい
思えば
俺は
あの時
断固として反対すべきだ
ふざけるな
そんな男に大事な乾杯の挨拶などさせるべきではなく
むしろ
婚式に呼ぶことさえ許さず
かつ
友人であることを否定し
仮に
向こうが友人だと思
ているのであれば
一筆書いた絶縁状でも送
りつけて
一方的に関係を絶
てしまうべきだ
たのだ
誰と誰を結婚式に招待するか
誰と誰を同じテ
ブルに座らせるか
メインデ
は魚がいいか肉がいいか
引き出物はどうするか
 
持ち帰りのプレゼントは何がいいか
入場曲は何がいいか
どの
タイミングで入場すればいいか
写真撮影はいつやればいいか
の順序で行うべきか
ミキは最後まで悩み続けた
結局のところ
どこまで小便をひ
かけるかという問題だ
下品
な話さ
マキという女は手を叩いて笑
中学校を卒業した後
一度だけ
持田知子に会
たことがある
同窓会の席上だ
 
持田知子はすでに結婚して
一児の母にな
ており
お腹の中には
二人目の子供を宿していた
寒くしち
いけないから
そう言
スト
ルを腹巻きのように
グルグル巻いていた
なぜ
こんな女が好きだ
たのだろう
そう思う一方で
俺は嫉妬
もした
何に対してかはよく分からない
パイロ
トをしているという旦那
に対してだろうか
酒の力を借りることなく
臆面もなく
幸せだ
とのたまうことに対してだろうか
そのいずれも違
て思えた
好きとか
嫌いとか
忘れるとか
忘れられないとか
そういうこ
とではなくて
その時の俺には
ただ
妊娠5
月目だという持田
知子の胸が
心なしか
くらとして見えたのだ
ねえ
結婚する
てどういう気分
マキという女が言
男が
結婚前夜にどういうことを考えているか
知りたいな
トロ
村田が答えた
トロ
村田がタバコをくわえる
女が火をつける
ブレ
キの壊れたトロ
コだよ
知らないのか
インデ
ンズとかによく出てきただろ
曲がることもできない
降りること
もできない
ひたすら進むだけのトロ
なんか
夢がないわ
要するに
結婚したくない
てことなの
ボンレスハムのような二の腕をした女が呟く
場が静まり返る
相手によ
てはね
村田がポツリと笑
て言
その相手というのが自分だと気づい
たボンレスハムのような二の腕をした女は
超失礼
と叫んで
村田を叩く真似をした
マキという女がタバコをくわえ
てもいい
と言う
俺は頷
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