第2のサヨナラ
独身最後
結婚前夜
その1
結婚することになりました
おかしいだろ
俺は言
何が
水割りを作りながらマキという女が言
髪の毛を耳にかける仕草が
誰かに似ていると
俺は思う
そんなに見ないでよ
 
女が面倒臭そうに言う
どこか面白が
ている様子だ
お互い
自分の意思で結婚するんだろ
たら
結婚
します
もしくは
結婚することにしました
でいいじ
ないか
ちだ
ていいじ
ない
ミキは相手にしてくれなか
結婚式の招待状を印字している時のことだ
結婚式場に頼むと
一通10円のプリント代がかかると言われた
少しでも経費を削減するために
俺とミキは
家のプリンタ
|
で刷
ることにした
招待状は全部で100通する予定だ
たから
それだけでも千円浮
ミキは嬉しそうに言うのだ
確かに言われてみれば
おかしいわよね
マキという女が
グラスを手渡しながら言
何がおかしいものか
俺はグラスをあお
こいつ明日
結婚式なんだぜ
村田が言
女たちは醜悪に笑
たが
マキという女は笑わなか
その名が明日
生涯変わらぬ愛を誓う女と
一字違いの名前である
ことが
ひどく滑稽に思えた
これからはじまる結婚生活であろう
いかなるものかを暗喩しているようにも思えた
こんなところで油売
ていていいの
奥さん心配するんじ
ない
二の腕をボンレスハムのように肥えさせた女が
たるい声で言
油を売る
錦糸町のキ
バクラ女が
いかにも言いそうな台詞だと
お前はし
べるな
馬鹿
ひど
|
今日は
独身最後の日なんだね
マキという女が言
乾杯しようよ
村田が黒服の男を呼び
上ず
た声で新しいボトルを入れるように
言うと
女たちは歓声を上げた
私も頼んでいい
俺は好きにすれ
ばいいと答えた
マキという女は嬉しい
と手を叩いた
俺はキ
バクラに来るのは初めてのことなので
よく分からないが
そういう仕組みなのだ
男が
席に座
女と酒を飲む
滞在した時間が長ければ長いほど
料金は高くなり
店の売り上げ
につながる
そして
おそらく女たちは
その利益の中の何パ
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セントかの金をせ
しめる
だから
女たちは俺たちをいい気分にさせて
できるだけ
酒を多く飲ませようとする
布切れにも等しい面積しかないような衣服を着て
どぎつい香水を
ふりまき
たるい声を出し
結婚式を明日に控えてなお
居場
所の定まらないような男と乾杯するのだ
俺は財布を取り出すと
女たちに放
ほしいならも
ていけよ
馬鹿野郎
村田が慌てた様子で
こいつ
こういうところ来るの
はじめてだ
から
と言
何年か前の誕生日に
ミキがプレゼントしてくれ
た財布を手に取
俺の胸元に押し込もうとする
俺はそれを突
返そうとする
滑稽だ
そういうことしない方がいいよ
マキという女が
ため息混じりに言
大体
嫌ならやめればいいじ
ない
結婚
女は持田知子によく似ている
俺はそう思
持田知子というのは
中学生の時
俺が好きだ
た女の子だ
八重歯の可愛い
|
トカ
トがよく似合う
|
な女
の子だ
ある時
内村というニキビ面の男子が
すげえもんを手に入れた
と踊り場に駆け込んできた
踊り場には
壊れた机だの
椅子だの
が積み上げられていた
埃に塗れ
陰気臭い場所だ
屋上に続
く唯一の出口には鍵がかけられており
出ることもかなわなか
そんな場所が
あの頃の俺たちの居場所だ
内村が職員室に忍び込んで手に入れたというものは
クラスメイト
の健康診断の結果だ
女子の発育状況がすべて表記されていた
持田知子は
プだ
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