第
1
2
最後のサヨナラサヨうであるナラば
、
いざゆかん。
その1
﹁
これ、
何?
﹂
作品集をめくる女の手が
、
ピタっ
ととまる。
そこにはポラロイドで撮影した
、
ボロボロの車の写真が貼り付けられている
。
次のペ
|
ジにも。
次のペ|
ジにも。
それらは同じ写真のようでいて
、
微妙に違う。
車は
、
ペ|
ジをめくるたびに、
傷つき、
色あせていく。
﹁
何これ?
﹂
女が笑う。
※
かつて
、
近所のドラッ
グストアの駐車場にとめられた、
一台の車を
、
一年がかりで撮り続けたことがあっ
た。
駐車場は
、
百台近く停められるほど巨大だっ
た。
余りの広さ故に
、
管理するのが難しかっ
たのだろう。
そこは常に不法駐車であふれかえ
っ
ていた。
深夜を過ぎても
、
朝になっ
ても、
次の日になっ
ても、
同じ場所に車が停ま
っ
ていた。
中には
、
停められたのではなく、
捨てられたものもいくつか存在した
。
白いステ
|
ショ
ンワゴンは、
その中でも
、
一番の古株だっ
た。
いつから停ま
っ
ているのか、
誰にも分からない。
気づいたら
、
そこにあっ
た。
そんな感じ。
※
当時
、
俺はバイトの行き帰りに毎朝
、
毎夕、
その駐車場を通らなければならなかっ
た。
ある朝のことだ
。
駐車場をいつものように通りかかっ
た時一台の車の窓ガラスにヒビが入
っ
ているのに気づいた。
昨日にはなか
っ
た傷跡だっ
た。
夜の間に
、
誰かが相当な力を込めて、
叩いたのだろう。
ヒビは
、
くもの巣のようにガラスを侵食していた。
それを除けば
、
昨日と変わらない今日だっ
た。
向かいの民家の庭で
、
ランニング姿の老人が水を撒いていた
。
間近に停められたタクシ
|
の中で、
アイドリングしながら仕事をさぼ
っ
ていた。
明日も明後日も続くであろう
、
いつもと変わらない平穏で
、
退屈な一日だっ
た。
そんな中
、
一夜にして、
変貌を遂げた姿に心かきたてられ
、
俺は
、
夢中でシャ
ッ
タ|
を切っ
た。
それが車の一生のはじまりだ
っ
た。