第
1
1
のサヨナラ愛の鉄の巣
。
その8
﹁
ねえ、
ここから放り投げたら、
全部、
星になるっ
てことにしない﹂
私は言
っ
た。
﹁
何それ﹂
﹁
嫌なことも、
いいことも。
どうでもいいことも。
全部、
星になるの
﹂
﹁
レイコさん、
時々
子供みたいなこと言うよね﹂
ツヨシ君が笑う
。
﹁
いいじゃ
ない。
火をつけるよりましでしょ
﹂
﹁
どっ
ちにしても、
迷惑な話だ﹂
﹁
ロマンティ
ッ
クと言っ
てほしいわ﹂
私はバ
ッ
クから財布を持っ
てくると、
中に入っ
ていたお札の束をまとめて手にと
っ
た。
おそるおそる風にさらして
、
少しずつ手の力を弱める。
すると、
まるで
、
命を吹き返したようにお札達は、
バタバタ、
バタバタと私の手から羽ばたいてい
っ
た。
も
っ
たいねえ。
ツヨシ君がつぶやく。
あらかた飛ばしてしまうと
、
今度は、
玄関口に置いてあっ
た、
荷造りのためにと
っ
ておいたハサミを取っ
てきた。
手すりから頭を乗り出して
、
肩口から先にある髪の毛を切っ
た。
髪の毛は切
っ
た傍からどんどん飛んでいっ
た。
そのうちツヨシ君も面白が
っ
て、
僕も僕もと言い出して
、
私はツヨシ君の頭にもハサミを入れた
。
それからハンカチ
。
ノ
|
ト。
耳掻き
。
ネッ
クレス。
馬券
。
馬券?
私たちは色
々
なものを風に飛ばした。
イトカワさんが換気扇を回した時
、
こんな風にして
、
スズメの巣も散っ
ていっ
たのだろう。
﹁
それもいくの?
﹂
私が16カラ
ッ
トの結婚指輪を手にした時、
ツヨシ君はさすがに怯んだ様子だ
っ
たが、
キラキラ光り輝く指輪は
、
私の目には、
他の何よりも
、
星になることを望んでいるように見えた。
私は指輪を放り投げた
。
キラリと輝いたのは一瞬だ
っ
た。
指輪は一目散に落ちてい
っ
た。