第
1
1
のサヨナラ愛の鉄の巣
。
その4
※
﹁
どうしたの、
それ﹂
﹁
食べた﹂
﹁
うそ!
﹂
﹁
うそよ﹂
私はスコ
ッ
プとバケツの入っ
た砂場遊びをするための道具を手に、
アパ
|
トの裏手にある、
空き地に向かっ
た。
スコ
ッ
プとバケツは、
以前、
階下に住んでいた夫婦が引っ
越していく際に
、
忘れてそのまま放置していっ
た。
色あせて小汚いスコッ
プとバケツだ
っ
た。
置き忘れたのか
、
それとも、
不要になっ
たのか。
どちらかは分からない
。
きっ
と新しい場所に移っ
て、
そこにふさわしい、
真新しいもの買い直したことだろう
。
出て行っ
た者は、
誰も振り返らない場所なのだ
。
私はスコ
ッ
プを使っ
て、
小さな穴を掘っ
た。
その間
、
スズメの夫婦が心配して、
私の周囲をぐるぐると舞っ
ていた
。
時折、
悲しげにちゅ
んちゅ
ん鳴いた。
日頃同じように聞こえる鳥のさえずりにも
、
色々
なものがあるということを私はその時、
はじめて知
っ
た。
私は
、
穴の中に、
タマゴがくるまれたスズメの巣をそっ
と横たえて、
土でフタをした
。
そして、
傍らにあっ
た小枝を墓標代わりに突き刺して
、
手を合わせた。
どうして
、
そんな残酷なことができたのか。
今でもよく分からない。
ただ
、
もし私がスズメだっ
たら。
鉄の巣を築いただろう
、
と思っ
た。
風にも換気扇にも
、
びくともしないくらい強く、
ゲスな人間に触れられることもない
。
高い場所に。
鉄の巣を築くだろうと思
っ
た。