のサヨナラ
愛の鉄の巣
その3
嫌いだ
何が
 
スズメが
 
イトカワさんが
ツヨシが皮肉るように言う
みんな
嫌いだ
遠くの夜空を
明滅する光点が飛んでいく
東京を遊覧するヘリコプタ
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か何かだろう
そういえば
この部屋に住んで3年
鳥を見かけたことはない
ズメにと
巣作りするには
あまりに高すぎるのかもしれない
何で嫌いだ
たの
分からないわ
ただ
か行
てくれ
いい加減にしろ
そう思
ていた
そんな小さな枝葉を集めて何ができるのだ
たとえできたとし
ても
吹けば跳ぶような巣の中で
一体どんな幸せをかなえるのだ
あんまり幸せじ
なか
たんだね
幸せじ
なか
自分が幸せなら
人の不幸せを願
たりしない
ツヨシ君はそう言うと
手すりに背中を持たれかけ
分かるよ
僕もそうだから
と言
笑顔もなく笑
ある日のことだ
学校から帰
てきたら
ねずみ色のジ
ンバ
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を着て
頭にタオル
を巻いた
おじさん達に出くわした
おじさん達は
イトカワさんの依頼を受けて
部屋のダクトにでき
たスズメの巣を撤去しようとしているところだ
その前の週
イトカワさんは長期の出張に出かけたらしく
長い間
家を不在にしていた
その隙に
スズメはせ
せと小枝を運び入れ
巣作りを成し遂げたのだ
ゴソゴソ
おじさんがダクトの中に
体の半分をのめりこませる
引き抜かれた手には
毛マリみたいな形をしたスズメの巣があ
そして
その巣の中央には
小さなタマゴがくるまれていた
んち
んち
スズメの夫婦が
電線で悲しげにさえず
ていた
ねずみ色のおじさん達も
取り出したはいいものの
スズメの巣を
どうしたらいいものか
途方に暮れている様子だ
彼らはしき
りに
部屋の前に座り込んで
その作業の一部始終を眺めていた私
をチラチラと伺
おそらく
私がいなか
たら
巣をゴミ箱に放り込んで
それで終
わりだ
たに違いない
結局
彼らはスズメの巣を
イトカワさんの部屋の電気メ
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上に置いて
こうすれば
もしかしたら
うまくいくかもしれな
いからな
そう言
その場を去
てい
もちろん
ウソだ
私は彼らが思
ているほど
子供ではなか
真夜中
仕事から戻
てきて
台所でしくしく泣く母を
ふすま越
しに見て育
てきた
スズメの巣というものが
どういうものかは
分からなか
たが
少なくとも
換気扇のダクトの中に密やかに作
られるものが
人目にさらされた電気メ
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の上で生きていける
わけないことぐらい
とうに理解していた
だから
私は
スズメの巣を譲り受けることにした
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