のサヨナラ
愛の鉄の巣
その1
52階から見下ろす世界は
何もかもが小さく映る
車がマ
チ箱なら
人間なんてマ
チ棒ほどの大きさしかない
街並みは
手を伸ばせば
触れることもできる
まるで誰かが作
た精巧な模型のように美しい
ここに越してきたばかりの時は
心が躍
すべてが
うまくいくと信じることができた
ちのビルをこ
ちに
ちのビルをあ
ちに
ポキ
と折
入れ替えて
継ぎ足して
そんな風に人生を思い通りにできる
と無邪気に信じることができた
なぜだろう
あの頃と何ら変わらずに輝く街並みを見ていると
自分一人が見捨てられたような気にな
てくる
自由にならないのなら
そのこと壊してしまいたい
子供のようにそんな風に思う
本当に出て行くの
かり後片付けが済んで
何もなくな
た部屋の中に
ボオ
かすかな火が灯る
タバコに火をつけたツヨシ君の顔が
煙に歪む
レイコさんの人生だから
とやかく言うつもりはないけど
ているのだか
悲しんでいるのかよく分からない顔だ
お七
てる
と私は言
お七
そう
何とかお七
江戸時代の話
何それ
好きな人に会うために
江戸の町に火をつけるの
何のために
火消しなの
好きな人が
だから彼と会うために
わざわざ火事
を起こすの
ごほんごほん
ツヨシ君がむせかえる
それは
ずいぶん
迷惑な話だね
そう
 
ロマンチ
クだと思うけど
レイコさんらしくない
笑うツヨシ君に
あたしらしさ
て何
と私は問いかけた
ツヨシ君は立ち上がると
くり私のもとへ歩いてきた
くわえタバコの光点が
ゆらゆらと揺れる
ツヨシ君はガラ
と窓を開けると
素足のままベランダに出た
も後に続く
風がひどく冷たい
ほんと
きれいだね
ツヨシ君が
ベランダの手すりに身を乗り出してつぶやく
その口
からポロリと
タバコが落ちた
私は一瞬
東京が火の海に包まれることを夢想した
だが
タバコは風に舞
東京タワ
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に向か
て飛んでい
小さな光点は
無数のネオンにまぎれて見えなくな
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