のサヨナラ
ハルウララ
サイレンスズカ
その3
何が変わ
たものか
変わ
たのは
てめえの方だ
てな
タバコを投げ捨てる
ツヨシが言葉もなく
とため息をつく
俺の捨てたタバコをそ
ともみ消した
でも
そこから巻き返したんだ
すごいじ
負けず嫌いなんだ
当初は
もう終わりだろう
競合だけでなく
取引先からも愛想を
つかされた
もともと
技術レベルの高さや提案力を評価されてい
た会社だ
強みと言うべき多くの技術者をきりすてたのは致命
的だ
おそらく
そうなることを見越していたのだろう
三笠は
辞めるにあたり
退職金も受け取らなか
俺と折半して所有していた株は
名目上
新たに取締役に就任した
レイコが買い取
事実上
俺の保有と言
ていい
そのまま持
ち逃げするのではないかと危惧していた分
その潔さには拍子抜け
するほどだ
立つ鳥後を濁さず
最後まで会社のことを思う
その清廉さが
かえ
て鼻についた
水天宮のオフ
スに移ると
俺は猛攻を仕掛けた
三笠を否定するためにも
会社をこれまでよりも
大きくさせなけ
ればならなか
医療
介護の求人ポ
|
タルサイトを買収し
投資用不動産のための
仲介サイトを新たに立ち上げ
大手のゼネコンと組んで
有料老人
|
ムのための土地の買収にも手を出した
三笠が指摘したように
資産価値を図る指標が
技術者や技術力な
んて
不明確な状態とはおさらばしたか
たのだ
結果は
にではあるが
着実に現れ始めた
今では
月間ベ
|
スで
往時を上回る売り上げを叩き出すまで持ち
直した
その割りに
あんまり嬉しそうじ
ないけど
経営者
てのは
孤独なんだよ
そんなもんすか
ツヨシが皮肉
たように笑う
確かに
会社は息を吹き返した
だが
それは同じ会社としてではない
違う会社としてだ
談合もや
金饅頭も包んだ
買収に応じない奴らの家の前には
カラスの死骸を投げ込んだ
別に俺が命令したわけではない
ただ
死んでも目標は達成しろと言
ただけだ
あれから
1年
時折
自分の醜さに愕然とすることがある
もともとは
三笠と二人
世の中にはない
新しい物を生み出した
その一心でスタ
|
トした会社だ
その思いのもとに
多く
の技術者が集
それで大きくな
てきた会社だ
それがどうだ
今では
一日に何件電話をかけて
何件アポをと
てきたかが問われる営業会社に成り下が
てしま
臭いのは
てめえの鼻の穴が臭いからだ
 
何だ
何でもない
会社を立ち上げて間もない頃
大手企業や
権威主義の会社をから
かう時
三笠とよく言
ていた冗談だ
今はもう
そんな冗談はど
こからも聞こえてこない
もう
誰も俺に意見する者はいない
タバコに火をつける
俺は自由だ
俺は勝
本当か
 
臭すぎて
誰も何も言わないだけじ
ないのか
ねえ
聞いてもいい
ツヨシが言う
何で
右肩上がりじ
ないといけないの
|
スとかでも
よく言うじ
前年比何パ
|
セント成長で
今年も増収増益とか
でも
とでもへこむと
大変
だ大変だ
当たり前だろ
会社
てのはそういうもんだ
誰だ
てへこむ時ぐらいあるじ
人間と会社は違う
思うんだよね
とんとんでいいじ
確かに赤字はや
ばいかもしれないけど
食べていける程度もらえるなら
よしとす
ればいいじ
なんかさ
昨日より今日
今日より明日
永遠の
右肩上がりなんて
気持ち悪いよ
今日と同じ明日
それが幸せだ
て別にいいじ
タバコの煙の行く先を見つめる
俺は
自らに言い聞かせるように答えた
買い物をする時
同じ品質のものであれば
客は1円でも安い商
品にむらがる
1秒でも早いサ
|
ビスを望む
優劣をつけ
順序を
つけ
選択する
だから
会社が利益を上げる
てことは
それだけ客に選択される
てこ
とだ
会社が選んでるんじ
ない
選んでるのは
客なんだよ
すべては僕らみたいな
一般人のせいだ
て言いたいわけだ
ふん
ツヨシは鼻を鳴らす
なんか納得いかないな
うがない
とも
人類はそうや
て進
化してきたんだよ
僕は違う
 
ツヨシはニカ
と笑うと
大きく手を広げる
とりあえず
生きていれば幸せだ
お前みたいな奴ば
かりなら
人類はいまだに石器時代だ
僕は別に
それでもよか
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