第1のサヨナラ
大好きな人とのメ
|
ルの終わらせ方
。
その1
大好きな人とのメ
|
ルを
、
どうや
っ
て終わらせたらいいか分からない
。
﹁
お休みなさい
﹂
が合図だと言う人もいる
。
でも
、
大好きな人が眠りにつくのだ
。
﹁
いい夢を見てね
﹂
と返信したくなるのが
、
道理ではないだろうか
。
※
大輔からのメ
|
ルは
、
一向に返
っ
てこなか
っ
た
。
私は携帯をマナ
|
モ
|
ドに切り替えると
、
ベ
ッ
ドの上に投げ捨て
、
枕でフタをした
。
枕に顔をうずめようとしたが
、
そんなことをしたら
、
メ
|
ルが来る
のを
夢の中まで待
っ
ていなければならないような気がして
、
そんなのは
嫌だと思
っ
て
、
お風呂に入ることにした
。
問題なのは
、
私が携帯を肌身離さず持
っ
ていることであ
っ
て
、
メ
|
ルが来ても
、
それに気づかなければいいのだと思う
。
朝にな
っ
て
、
メ
|
ルが来ていたことに気づき
、
慌てて
﹁
ゴメンね
﹂
とメ
|
ルするのだ
。
﹁
昨日はお風呂に入
っ
て
、
気持ちよくな
っ
て
、
そのまま寝ち
ゃ
っ
た
。
でも
、
ち
ゃ
んと夢で会
っ
たんだ
|
﹂
なんち
ゃ
っ
て
。
※
いつもより温めのお風呂に長く浸かる
。
私はお風呂が好きだ
。
歯磨き
、
洗顔
、
食事
、
お風呂の中で何もかもを済ませてしまう
。
音楽を聞くこともあれば
、
読書をすることもあるし
、
メ
|
ルをする
こともある
。
そのために防水用の携帯に新たに買い換えた
。
お風呂を上がると
、
髪の毛をドライヤ
|
で乾かす
。
大輔がきれいだと言う
、
細く
、
長い髪の毛
。
私は生まれてこのかた
、
髪の毛を肩より短くしたことがない
。
女の子は失恋したら髪の毛を切るというが
、
私がこれまでそうしなか
っ
たのは
、
失恋知らずだ
っ
たからとか
、
そんな大それたものではなく
、
むしろ
、
そうしなければならないく
らい
、
誰かを好きにな
っ
たことがない
、
という方が正しいと思う
。
※
もし
、
大輔と別れるようなことがあ
っ
たら
、
私はば
っ
さり髪の毛を
切るだろうか
。
ついつい枕の下の携帯に目がい
っ
てしまう
。
私の携帯は着信履歴があれば
、
全体が薄光りするようにな
っ
ている
が
、
光が点
っ
ている様子はなか
っ
た
。
﹁
返事はもういらないよ
﹂
なんて書かなければよか
っ
た
。
結局のところ
、
メ
|
ルを終わらせることができるのは
、
自分が相手を思うよりも
、
相手が自分のことを思
っ
てくれていると
いう
、
自信に尽きる
。
こんなち
っ
ぽけなやり取りの中にも
、
勝者と敗者はいて
、
私はそのことにうんざりする
※
時計は
、
2時を回ろうとしていた
。
しがみつく自分の思いを断ち切りたくて
、
私は携帯の電源を切るこ
とを考える
。
でも
、
朝にな
っ
て電源を入れた時
、
﹁
新着メ
|
ルは届いていません
﹂
っ
て画面を見る方が
も
っ
と悲しいと思い
、
や
っ
ぱり携帯を枕の下に押し戻そうとするが
、
電池の目盛りが減
っ
ていたので
、
充電器にさすことにする
。
メ
|
ルにも
、
あと何回とか
、
リミ
ッ
トがあればいいと思う
。
それを使い切
っ
たら
、
今日はもう終わり
。
どんなにメ
|
ルをしたくても
、
それを伝える手段がなければ
、
受け取る手段がなければ
、
苦しまずに済む
。
期待せずに済む
。
い
っ
そのこと
、
携帯など
、
この世の中になければよか
っ
たのだ
。
髪の毛が上手くまとまらない
。
どうせあと何時間かしたら
、
また化粧をして
、
服を着て
、
会社に行かなければならないというの
に
。
※
鏡の中の疲れた自分を見ていたら
、
誰かと無性に話したくな
っ
た
。
大輔でなくていい
。
全く違う誰か
。
どうでもいい人
。
メ
|
ルに返事を返さなくても
、
これ
っ
ぽ
っ
ちも気が咎めない
。
そん
な人
。
そういえば
、
サヨナラを言うのを忘れていたことを思い出す
。
先日
、
会社を去
っ
てい
っ
た人がいた
。
右向かいに座
っ
ていた先輩だ
。
いつも無精ひげが生やしており
、
乾燥肌だとい
っ
て
、
シ
ャ
ツの下に手を入れて
、
所構わずボリボリ掻いた
。
不潔な奴だ
っ
た
。
そいつの机の上は
、
書類だの
、
ペンだの
、
メモ用紙だので
、
いつも
散らか
っ
ていた
。
その中に
、
貯金箱が置かれてあ
っ
た
。
オモチ
ャ
の景品で当た
っ
たとかいう
、
ビニ
|
ル製の貯金箱だ
。
そいつは毎朝
、
出社するたびに
、
財布の中の小銭をそこに入れた
。
多くは五円
、
十円だ
っ
たように思う
。
でも
、
一枚一枚
、
さも大切なもののように
、
指で強く弾いて入れた
。
貯金箱が一杯になると
、
そいつは貯金箱を振
っ
た
。
そうすることで見えない空洞や隙間を埋め
、
そこにさらに
、
多くの
、
ち
っ
ぽけな幸せを蓄えようとするのだ
っ
た
。
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